配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

たとえば、遺産総額が1億6千万円で、その全てを配偶者が相続した場合、配偶者の税額軽減の規定の適用を受けることにより、納付すべき相続税額はゼロなります。

配偶者の税額軽減の規定の適用を受けるには、相続税の申告書にこの規定の適用を受ける旨および税額軽減の明細を記載し、戸籍謄本と遺言書の写しや遺産分割協議書の写しなど、配偶者の取得した財産が分かる書類を添えて提出する必要があります。

この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。そのため、相続税の申告書の提出期限までに、遺産の全部または一部の分割がされていない場合には、その分割されていない財産は配偶者の税額軽減の対象になりません。ただし、その分割されていない財産が申告期限から3年以内に分割された場合など、更正の請求により適用が可能となる場合もあります。

配偶者の税額軽減の適用を受けるべきか

夫の相続(1次相続)と、妻の相続(2次相続)の間隔がそれほど長くないと予想される場合には、第1次相続において配偶者(妻)が相続する財産を少なくしておくことで、1次相続および2次相続の合計での相続税額を減らせることもあります。また、配偶者に固有の財産がある場合にも、同様の対策が考えられます。

1次相続および2次相続の相続税額をトータルで考えると、配偶者の税額軽減の適用を最大限に受けることがいつでも有利とは限りません。相続税額を詳細に計算した上で、相続税の負担が最も減る遺産分割を検討することが重要です。

相続税法第19条の2

 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもってその納付すべき相続税額とし、第1号に掲げる金額が第2号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。

一 当該配偶者につき第15条から第17条まで及び前条の規定により算出した金額

二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額

イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第900条 (法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が1億6,000万円に満たない場合には、1億6,000万円)
ロ 当該相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額