法定相続人に含まれるのかどうか判断が難しいと思われる事例について解説します。

1.親の養子は兄弟姉妹として相続人になる

2.縁組前に出生した養子の子は代襲相続人にならない

3.法定相続人の範囲についての基本(参考)

1.親の養子は兄弟姉妹として相続人になる

被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の子、直系尊属に続く第3順位の法定相続人です。兄弟姉妹とは、親の実子だけでなく、親の養子も含まれます。

民法727条により「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる」とされているので、親の養子は兄弟姉妹として法定相続人になります。

下の図では、二男の妻が亡母と養子縁組しています。二男と妻には子がいません。この場合に、二男の妻が亡くなったとすれば、長男、長女も兄弟姉妹として相続人になるわけです。

妻が亡母と養子縁組

また、下の図では長女の子が両親と養子縁組をしています。長男に子はいません。この場合に、長男が亡くなったとすれば、親の養子(姉の子)も兄弟姉妹として相続人になります。

兄の子が両親と養子縁組

(縁組による親族関係の発生)

民法第727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

2.縁組前に出生した養子の子は代襲相続人にならない

相続関係は下図のとおりです。養親Aと養子Bは、平成10年に養子縁組をしています。Bにはその時点で子(長男C)がいました。その後、平成12年に二男Dが生まれています。

養子Bは平成30年に養親よりも前に死亡し、養親Aは令和2年に死亡しています。この場合、Bを代襲して相続人となるのは誰でしょうか。

縁組前に出生した養子の子は代襲相続人にならない

まず、民法727条において、養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生ずるとされているのは、養子と「養親及びその血族」との間です。

「養子の血族」はここに含まれていませんから、養親と「養子の子」との間に親族関係が生じることはありません。よって、養親Aと、養子の子であるCとの間に親族関係は無いことになります。

また、代襲相続については民法887条に定めがあり、第2項で「被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき」に代襲相続が生じるとされています。そして、このときには「その者の子がこれを代襲して相続人となる」のですが、但し書きにおいて「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」とあります。

長男Cは養子Bの子ではありますが、被相続人であるAとの間には親族関係がありませんから、直系卑属にも該当しません。したがって、CはAの法定相続人とはなりません。

これに対し、二男Dは養子縁組の後に生まれていますから、養親Aの直系尊属であり、養子Bを代襲して法定相続人となります。CもDも、養子Bの子であるのにもかかわらず、養子縁組の時期により代襲相続するか否かが異なってくるのです。

民法727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。


民法887条 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、または第891条の規定に該当し、もしくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。


養子の縁組前の出生子は、養親との間に血族間におけると同一の親族関係を生ずるものでない。また、代襲相続人は、被相続人及び相続人となるべきものの直系卑属であることを要するとしているので、養子の縁組前の出生子は、養親の死亡によつて相続が開始した場合にその代襲相続人とならない(昭和27年2月2日民事甲89)

3.法定相続人の範囲についての基本

被相続人の親族は、次の順位で相続人となります。また、被相続人に配偶者がいるときは常に相続人となります。

第1順位 被相続人の子
第2順位 被相続人の直系尊属
第3順位 被相続人の兄弟姉妹

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡しているときなどには、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となります。また、孫も死亡しているときには、ひ孫が代襲して相続人となります。

相続人となる子(または、子の代襲者)がいない場合、被相続人に存命の直系尊属(父母、祖父母など)がいれば相続人となります。なお、直系尊属は親等の近い人から順に相続人になるので、父母と共に祖母が相続人になるようなことはありません。

第1,第2順位の相続人に該当する人がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。この場合に、相続開始以前に死亡している兄弟姉妹がいるときなどには、その者の子(被相続人の甥姪)が代襲して相続人となります(兄弟姉妹については再代襲はしません)。

民法887条 被相続人の子は、相続人となる。

2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、または第891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、もしくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、または第891条の規定に該当し、もしくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。


民法889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

二 被相続人の兄弟姉妹

2 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。


民法890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条または前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。