4.各種の数次相続
4-2.数次相続の遺産分割協議と一括申請(不動産が複数ある場合
1.数次相続で中間省略登記が認められる場合
数次相続による登記で、中間省略登記が認められる場合は次のとおり。
- 中間の相続が単独相続である場合
- 遺産分割により中間相続が単独相続となった場合
- 相続放棄により中間相続が単独相続となった場合
- 他の相続人に相続分のないことにより中間相続が単独相続となった場合
2.順位の異なる相続人が相続する場合
下記の先例では、順位の異なる相続人である丙とAが不動産を相続するとの遺産分割協議をおこなっています。
この場合、一件の登記申請によることはできず、まずは亡乙と丙の共有名義にする相続登記をおこなった後、乙からAへの相続登記(乙持分全部移転登記)をすべきだとしています。
3.最終相続人が1人の場合の相続登記
3-1.遺産分割協議などがおこなわれていない場合
下図の例では、相続開始時には、被相続人甲の配偶者乙および子丙の2人が相続人だったが、相続登記をおこなわないでいるうちに配偶者が死亡しています。この場合、乙の生前に遺産分割協議をおこなっていたというような事情が存在しないときには、甲から丙への直接の相続による所有権移転登記をすることは認められません。
最終相続人が複数の場合には、中間相続が単独であれば、最終相続人に対して直接の所有権移転登記ができるのに対し、最終相続人が1人のときは中間省略登記が認められないわけです。かつては、最終相続人1人による遺産分割協議書(遺産分割決定書)などの書面を添付することで、最終相続人に対して直接の所有権移転登記が可能だったのが、現在では否定されることとなりました。
3-2.遺産分割協議がおこなわれていた場合
上記と同様の相続関係の場合で、乙の生前に、乙と丙の間で丙が単独で甲の遺産を取得する旨の遺産分割協議が成立していた場合、丙が単独で作成した遺産分割協議証明書により、相続による所有権の移転の登記の申請に係る登記をすることができます。
(別紙)
遺産分割協議証明書
平成20年11月12日○○県○○市○○町○丁目○番○号Aの死亡によって開始した相続における共同相続人B及びCが平成23年5月に行った遺産分割協議の結果,○○県○○市○○町○丁目○番○号Cが被相続人の遺産に属する後記物件を単独取得したことを証明する。
平成27年1月1日
○○県○○市○○町○丁目○番○号
(Aの相続人兼Aの相続人Bの相続人)
C(印)
不動産の表示
(略)
なお、上記先例中で次のとおりその理由が示されています。
4.各種の数次相続
4-1.中間が単独相続でない場合
上記の場合、Aの死亡によりBとCが共同相続しますから、この中間相続についての登記を省略して、AからCへ直接の所有権移転登記をすることはできません。
まずは、D・EがAの特別受益者である旨の証明書を添付して、Aの死亡によるBとCへの所有権移転登記をします。続いて、D・EがBの特別受益者である旨の証明書を添付して、Bの死亡によるCへの所有権移転登記(B持分全部移転登記)をすることになります。
4-2.数次相続の遺産分割協議と一括申請
下図のような相続関係で、丁と戊による遺産分割協議により、甲名義のA不動産は乙、B不動産は丙が相続するとの協議がととのったときの相続登記申請について。
この場合、A不動産については、甲から乙に直接の所有権移転登記をすることができる。A不動産は、中間者である乙が単独相続しているので、中間相続を省略して最終相続人への所有権移転登記をすることが可能。そして、その登記原因及び日付は「年月日乙相続(甲死亡の日)年月日相続(乙死亡の日)」と列記する。
また、B不動産についても、同様に甲から戊に直接の所有権移転登記をすることができる。B不動産については「年月日丙相続(甲死亡の日)、年月日相続(丙死亡の日)」と列記する。
A不動産、B不動産の登記については一括申請することはできず、各別の申請情報によらなければならない。それぞれの不動産について、登記原因及び日付が異なるので一括申請できないのは当然。
甲の死亡により、乙・丙が共同相続人となったが、その相続登記の未了の間に、乙が死亡し、丁が相続人となり、更に丙が死亡し戊が相続人となった場合には丁と戊の間で、甲の相続につき遺産分割の協議をすることができる。
この場合に、甲名義のA不動産は乙がB不動産は丙が相続する旨の協議がととのったときは、A不動産については、その登記原因及び日付を「年月日乙相続(甲死亡の日)年月日相続(乙死亡の日)」と列記し、B不動産については「年月日丙相続(甲死亡の日)、年月日相続(丙死亡の日)」と列記して、各別に1個の申請ですることができる(登研544号)。