抵当権抹消登記をする際、抵当権者、抵当権設定者(不動産の所有者)、債務者の表示(住所、氏名など)が変更になっていると場合、事前に登記名義人住所変更の登記などが必要になることがあります。

1.抵当権設定者(不動産所有者)の住所などに変更がある場合

2.抵当権者の本店・商号などに変更がある場合

2-1.抵当権が消滅する前に、抵当権者が吸収合併されている場合

2-2.抵当権が消滅した後に、抵当権者が吸収合併されている場合

3.債務者の住所・氏名などに変更がある場合

1.抵当権設定者(不動産所有者)の住所などに変更がある場合

抵当権抹消登記をする際に、抵当権設定者(不動産所有者)の現在の住所が、登記記録上の住所と異なる場合、事前に登記名義人住所変更の登記をしなければなりません。

抵当権抹消登記申請書の登記権利者の表示が、登記簿の所有者の表示(住所)と一致しない場合において、表示の変更を証する書面を添付しているときでも、当該抹消登記申請は受理できない(登研355号90頁)

2.抵当権者の本店・商号などに変更がある場合

抵当権抹消登記をする際に、抵当権者の現在の本店・商号が、本店移転や商号変更があったことにより、登記記録上の本店・商号と異なる場合でも、事前に登記名義人表示(住所・名称)変更の登記をする必要はありません。

また、登記申請をする際に「会社法人等番号」を提供することにより、「住所の変更を証する情報」に代えることができます。つまり、本店移転の経緯が分かる履歴事項全部証明書などを添付する必要はないということです(ただし、閉鎖事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には、当該閉鎖事項証明に記録された事項は会社法人等番号で省略することはできません)。

2-1.抵当権が消滅する前に、抵当権者が吸収合併されている場合

抵当権の抹消登記をする際、抵当権が消滅する前に抵当権者が吸収合併されている場合、抵当権抹消登記をする前に抵当権の移転登記をする必要があります。住宅ローンの借入れにともない設定されている抵当権であれば、ローンを完済する前に抵当権者が吸収合併されている場合には、抵当権移転登記をしなければならないということです。

なお、抵当権移転登記が必要なのは吸収合併により、抵当権者が消滅会社となっているというような場合であり、抵当権者が存続会社の場合には抵当権移転登記は不要です。

また、旧住宅金融公庫から借入をしていた場合に、抵当権抹消登記をする前に独立行政法人住宅金融支援機構への抵当権移転登記が必要となるときもあります(登記原因は「平成19年4月1日独立行政法人住宅金融支援機構法附則第3条第1項により承継」です)。

2-2.抵当権が消滅した後に、抵当権者が吸収合併されている場合

抵当権が消滅した後に抵当権者が吸収合併されている場合、事前に抵当権移転登記をすることなしに、承継会社が登記義務者となって抵当権抹消登記をすることができます。

この場合の登記申請書の記載は次のようになります。合併証明書となるのは、抵当権移転登記をする場合の登記原因証明情報と同じなので、会社法人等番号を提供すれば閉鎖事項証明書等の添付は不要であるのが通常です。

登記申請書

登記の目的 ○番抵当権抹消

原因 平成○年○月○日弁済

権利者 (被合併会社 株式会社A)
     東京都中央区○○町○丁目○番○号
     上記承継会社 株式会社B
     (会社法人等番号 ××××-××-××××××)
     代表取締役 松戸 一郎

添付書類 登記原因証明情報 登記識別情報(登記済証)
     合併証明書 代理権限証書 会社法人等番号

(以下省略)

3.債務者の住所・氏名などに変更がある場合

抵当権設定登記をすると、債務者の住所・氏名(または、本店・商号)も登記されます。抵当権抹消登記をする際に、債務者の現在の住所が登記記録上の住所と異なる場合でも、事前に債務者の住所変更の登記をする必要はありません。

抵当権設定者(不動産所有者)が債務者である場合に、引っ越しなどにより抵当権を設定したときと住所が変わっている場合、所有者について登記名義人住所変更の登記をする必要があります。ところが、債務者については事前に住所変更の登記をすることなく、抵当権抹消登記をすることが出来るわけです。

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